世の中の90%の人は、ほめられて育つのではないかと思う。厳密な統計ではないが、研修やセミナーの講師を担当し、数多くの人を見てきて筆者はそう確信している。「ほめられると照れくさい」という人でも、その人の優れたところを見逃さずにフィードバックすると、たちまち破顔一笑されることも少なくない。
最近の脳科学によると、ほめられた時に分泌される脳内伝達物質が、脳の働きを高めるという研究成果も出ている。「ほめる」という行為は、単に人間関係改善だけでなく、生産性向上のためにも大きな効果があるのだ。
日本の企業のなかでは、「ほめる」という組織風土が欧米のそれと比較して、それほど根づいていない。その背景には、日本の伝統的な文化や習慣などが複雑にからみあっているが、ほめ言葉をどのように使ってよいのかわかっていないことも一因のようである。
そこで、今回は「ほめる」際の具体的なポイントを挙げるので、ぜひ参考にしてほしい。
1. 本当のことを細かく具体的にほめる
「君は素晴らしいね」× → 「君の応対の仕方は、心がこもっていてよかったよ」○
2. 相手の性格、置かれている立場・状況に応じてほめる
一人ひとりの部下の持ち味や長所、成長ぶりを見逃さない(ほめ上手 = 観察上手)
3. タイミングよくほめる
相手がよいことをした時、成果を上げた時にすかさずほめる
4. 先手をとってほめる
自分が成果を上げている時こそ自分のほうから相手をほめる(謙虚、信頼につながる)
5. 心を込めてほめる
飾らない言葉、シンプルな言い回しで気持ちを乗せて伝える(相手の心に響く)
6. おだてず媚びずにほめる
事実でないことをほめる(おだてる)、相手に気に入られようとふるまう(媚びる)×
事実に基づき相手の優れているところを認め伝える(相手の自発性・意欲を高める)○
コミュニケーション・モチベーションアップの潤滑油である「ほめる」という行為を相手に合わせることや、状況に合わせるなど上手に使い分け、根気よく実践していくことにより、職場が明るく活気に満ちた状態となり、ひいては生産性・業績の向上へとつながる。