新型コロナウイルス感染症の影響で、ウェブ会議ツールなどオンラインでのコミュニケーションが当たり前の時代となった。企業でもPC操作が苦手でオンラインでのコミュニケーションを避けてきた年配の人や「営業は対面でないと・・」という考えの人にもオンラインが浸透した結果、交通費の削減や移動時間の短縮といったメリットを企業にもたらした。
ある調査によると、「営業担当者に自社を訪問してほしいと考える一番の理由」は、誠意や安心感といったキーワードが上位を占めていた。
しかし、コロナ禍で世の中の状況は一変し、多くの企業でオンラインツールを活用するようになり、会議はもちろんのこと営業においても非訪問型が主流となった。
また、同調査によれば、肝心の商談成約率については、非訪問型の営業を導入している企業と訪問型の営業を導入している企業とでは数パーセントの違いしかなく(訪問型営業が数%高い)、対面とオンラインの営業では、商談の成約率に大きな変化はなかったとしている。
つまり、これまでは対面の方が相手にも伝わりやすいという思い込みがあっただけで、必ずしも商談の成約につながるわけではないということが分かってきた。
一方、米大手企業Amazonが世界で働く全社員に対し、現状週3日の出社体制を2025年1月2日から原則5日に戻すことを表明した。対面の方がスタッフ同士の連携やアイデア出しなどが容易で効果的にでき、互いにオフィスで顔を合わせることで関係性も深まるなど、出社のメリットがあるとの理由からである。世界を牽引するIT企業がアナログにも思える勤務体制に戻すというから驚きだ。
では、安心感や伝わりやすさと、交通費の削減、移動時間の短縮のどちらを選べばよいかの問題となるが、その判断基準を明確にしておくことが必要だ。
例えば、1時間の商談に往復2時間かけていたら、3倍の時間がかかる計算になり、加えて交通費もかかってしまう。オンラインの方が、コストメリットがあるのは明確であるが、緊急事態宣言などによって他県への移動が制限された過去の経験を活かすなら、いつ何が起きても対応できるように体制を整えておくことも重要であり、移動時間を削減する分を新たな営業方法の強化に注力するのも良いことだ。
いずれにしても当面はリモートワークと出社のバランスを重視したハイブリッド方式に落ち着くのかもしれない。