中小零細企業こそ高単価化を目指せ!

 中小零細企業で多い困りごとの一つに、原材料などの高騰、物価高のなか、思い切って値上げすることを検討しているものの、値上げは即客離れにつながる恐れもあり、なかなか踏み出せていないという現実がある。

 そこで注意したいのが、これまでと同様の商品&サービスで値段を上げないことである。顧客満足度を上げて、高単価化を図ることが極めて重要であるということだ。

 以下で値上げと顧客満足度アップに成功した事例を挙げるので参考にしてほしい。


【事例 温泉旅館「元湯陣屋」

 かつては1泊2日・2食付きで9,800円の価格で提供していた老舗温泉旅館では、経営悪化に伴い、独自のシステムを構築した。具体的には、これまで手書きやホワイトボードで女将や特定の接客係が属人的に管理していた予約情報や顧客情報を一元管理し、情報を全員で共有できるようにしたことである。

 その結果、業務効率が格段に向上するとともに、その業務効率改善で空いた時間を有効活用することで、もともとこの温泉旅館の強みであった顧客との会話の接点を増やすことや、顧客へ痒いところに手が届いた手厚いサービスを従来以上に提供できるようになったため、1泊2日・2食付きで3万5,000円の温泉旅館に生まれ変わり、経営難をV字回復させただけでなく、働き方改革(週休3日制)のモデルとしても業界内外から注目を集める企業へと大変身した。


 この事例からもわかるように、中小零細企業が大手を相手に価格帯を上げよう思うなら、大量生産・仕入、マスマーケティングでは到底適わないことを考えると、それ相応の付加価値を付け、高単価で販売することが一番の近道だと言えよう。

 つまり「手間や工夫を凝らして高単価な商品・サービスを提供する」言わば”オーダーメイド”が1つのキーワードとも言えるのではないか。

 幸いなことに中小零細企業には、腕の良い職人さんを抱えているところや、抜群の接客力や提案力を持った販売員さんもいるところが多いことから、熟練の技を十二分に生かした顧客に寄り添った商品・サービスを提供することで、顧客満足を上げるとともに、従業員の満足度も向上するのだと思う。

 中小零細企業であるからこその強み(=魅力)で高単価化を目指してほしい。