農業に企業経営型が浸透してきました。法人経営は3万2200社と5年で3割増え、国内で生産された農産物の販売額に占める割合も4割に達しています。一方、個人経営の農家は93.5万戸に減少しています(2017年は122.3万戸)この背景には異業種の参入や大規模農家の企業への転換が進んでいることが挙げられます。また、日本の農業は主要国で突出して高齢者の比率が高く、農業離れが進むなか、若い世代を取り込む受け皿になりつつあります。ウクライナ侵攻で食品価格は高騰しており、食料安全保障の観点からも農業の重要性は増しています。企業の力を生かした一段の体質改善が必要不可欠です。
新型コロナウイルス禍で打撃を受けた観光業に活気が戻ってきました。28日には現行の水際対策が終わり、本格的なインバウンドの回復が見込まれます。コロナ前の中心だった中国人観光客だけではなく、急増していた訪日ムスリム(イスラム教徒)への期待も高まっています。岐阜県高山市などは、文化や習慣を尊重するきめ細かい心遣いでムスリムを引き寄せています。「ムスリムフレンドリー(食事以外でもできる範囲で配慮する考え方)」は観光の大きなキーワードであり、イスラム教やハラルの基本を理解し、できることからしっかりと対応していくことが不可欠です。
ファミリーマートとドン・キホーテの運営会社が自社の顧客データを5月から共同で利用します。使用するデータは3000万回超に上り、国内最大級となります。匿名化したうえで消費行動を分析し、的確な販売促進活動に活かします。プライバシー規制でサイトの閲覧履歴によるデータ収集は難しいのが現状です。各社がそれぞれ保有するよりも大幅に多いデータを対象とすることで、消費者の購買特性の分析精度を高めることが可能になります。新たなデータの確保に向け、企業を超えた連携が本格化してきました。
国立社会保障・人口問題研究所は26日、長期的な日本の人口を予測した「将来推計人口」を公表しました。それによりますと、2056年(33年後)に人口が1億人を下回り、59年(36年後)には日本人の出生数が50万人を割り込みます。人口規模を維持できなければ国力は萎縮します。人口減少社会でも経済成長の維持を目指す施策を急ぐ時期に迫られています。少子化対策は出産や育児への財政支援だけではありません。例えば、先端技術の開発を人口減対応の観点から進め、人工知能(AI)などを上手く活用すれば労働代替が期待できます。子育てしゃすい環境づくりにつながれば出生率も改善する可能があります。それにしてもショッキングな数字の公表となりました⁉
人材サービス会社でつくる全国求人情報協会が25日発表した3月の求人広告数は、前年同月17.3%増の154万1078件でした。23ヶ月連続で前年を上回りました。インバウンドの回復や人流の増加をみすえて、飲食や販売、清掃業を中心に求人の増加傾向が続いています。件数は新型コロナウイルス禍前の2019年3月とほぼ同水準まで回復しました。ただ、コロナ禍で他の業種に移ってしまった経験者も少なくなく、そういった経験者との接点を増やすため、複数媒体に広告を出す事業者が増えているようです。
熟練した外国人材が日本で長く働く道が広がりそうです。人手不足対策として2019年に創設した在留資格「特定技能」について、長期就労が可能な業種を6月にも現在の3分野から全12分野に拡大する方向で関係省庁が調整に入りました。これが実現すれば期間限定の受入れだった飲食料品製造や外食などの分野で、技能を磨いた外国人労働者を企業が継続雇用できるようになります。一方、賃金が上がらない日本で働くメリットは薄れてきたとの見方もあります。例えば、台湾では非熟練者でも最長12年間(介護などは14年間)働けます。韓国は所得や語学力などが一定水準に達した外国人に永住権を与えています。日本もさらに外国人材を呼び込む手立てが必要となります。
新型コロナウイルス禍からの経済活動の正常化で、従業員がオフィス出社に回帰してきました。東京都心部のオフィス出社率は7割を超えます。対面重視へオフィス機能を強化する企業もあります。テレワークは居住地や勤務地も問わずに働けるため、企業が優秀な人材を確保しやすい利点があります。テレワークが定着するなか、企業は出社日数の目安を定めたり、テレワークでのコミュニケーションを工夫したりするなどアフターコロナの働き方改革を進めていくことがポイイントとなります。
GWのホテルの宿泊料金が急伸しています。日本経済新聞が5都市のホテルを対象にGW初日の平均客室単価(ADR)を調査したところ、前年から50%以上上がったとの回答が6割超を占めました。国内旅行の復調に加え、インバウンドも回復しています。単価の上昇は客室稼働率が高まっているためで、満室に近いとの回答が多くあったようです。一方、人手不足感が強まるなかで客室の供給制約懸念も高まっています。痛し痒しといったところでしょうか⁉
2022年度の貿易赤字が過去最大の21兆7284億円となりました。円安と資源高で輸入が膨らみました。円安は輸出を押し上げる効果があるものの、伸び悩んだかっこうです。新型コロナウイルス禍で部材の供給が成約を受け、経済回復による海外需要を取り込み切れませんでした。国内回帰といった生産体制の見直しに動く製造業も出始めましたが、人件費などコストを考慮すれば国内に生産拠点を戻すのは限界があります。
上智大学などを運営する学校法人上智学院は19日、上智大学短期大学部(神奈川県秦野市)で定員割れが続いているとして、2025年度以降の募集を停止すると発表しました。学校法人側は「四年生大学志向など近年の社会状況の変化の影響が大きく、急に志願者が減少した」としています。全国の短大279校のうち8割超は定員充足率が100%を下回っています(日本私立学校振興・共済事業団による調査・2022年度)我々世代にとってここにも隔世の感があります。
18日の東京株式市場で日経平均株価が8日続伸し、年初来高値を更新しました。終値は前日比144円5銭高い2万8658円83銭と、2022年8月22日以来およそ8ヶ月ぶりの水準を回復しました。前日の米株式市場の上昇を手掛かりに買い優勢の展開が続き、東証プライム市場では全体の7割強の銘柄が値上がりしました。米欧の銀行不安に一旦歯止めがかかり、リスク回避に傾いていた海外投資家が株価指数先物の買戻しを進めたことが要因で、22年末と比較すると上昇率は約10%に達しています。個人的には歓迎ですが、この反動が懸念されるところです。
小売り各社の業績がここにきて上向いています。インバウンド回復に賃上げも下支え要因となり、2024年2月期は7割の企業で純利益が前期から増加する見通しです。行動制限の緩和もあり消費マインドは改善し、貯蓄を支出に回す動きも期待されるところです。人手不足や光熱費など懸念材料もあるなか、幅広い業種への賃上げの広がりが今後の小売り業績を左右しそうです。
2022年度のふるさと納税は、苦戦の続く大都市で明暗が分かれる内容となりそうです。日経グローカルが実施した全国815市区予算調査で受入れ額の見込みを聞いたところ、全体では前年度比で21%増えました。京都市は47%増の92億円と過去最高となり、ふるさと納税による流出額を始めて上回りました。一方、川崎市など流出が拡大した自治体も目立ち、制度への不満が高まっています。ここでも勝ち組と負け組が鮮明になっているようです。
日本初のカジノを含む統合型リゾート(IR)が実現に向けて動き出しました。政府は14日、2029年の開業を目指す大阪府と大阪市の整備計画を認定しました。2010年に開業したシンガポールをモデルに観光消費や民間投資を取り込みます。一方、IRを巡る国際間競争は激化しており、また、ギャンブル依存症の問題が指摘されるカジノに収益の大半を依存するリスクもあります。ある意味テーマパークですから、ギャンブルとは無縁、関心のない人も一度は行ってみたいと思うのではないでしょうか。
スカイドライブ(愛知県豊田市)は13日、空飛ぶクルマを個人向けに販売することを発表しました。これまでは法人と交渉してきましたが、個人からの関心が高まっていることから予約の受け付けを開始しました。2025年国際博覧会(大阪・関西万博)で実用化を目指す機体で、価格は150万ドル(約2億円)程度、25年以降の納入を目指すとしています。販売価格はさておきマンガ、空想の世界が現実味を帯びてきました。
4月15日に開園40周年を迎える東京ディズニーリゾート(TDR)世界観に浸ることができるテーマパークを日本に根づかせ累計8億人が訪れました。ここまでエリアやアトラクションの拡張で集客力を高めてきましたが、本拠地である舞浜の敷地はほぼ埋まっている状況です。少子化や新型コロナウイルス禍でレジャー消費も変わり、従来型の拡大による成長モデルは既に限界に近くなっています。そこで、運営するオリエンタルランドは、タイムパフォーマンス(時間対効果のことで、かけた時間に対する満足度を表す)重視への転換を急ぐようです。
地方銀行で新入行員の初任給を引き上げる動きが広がっています。日本経済新聞社の集計によりますと、少なくとも全地銀の約4分の1となる20超の地銀が初任給の増額を決めたことがわかりました。かつて地銀は安定した就職先として人気がありましたが、最近は構造不況業種として敬遠されることも少なくありません。初任給の引き上げで優秀な人材の獲得につなげるのが狙いです。賃金以外にも働きがい、タイパ(かけた時間に対する効率)、抜擢人事、希望部署への異動なども重要です。本質的なところでは、地銀の存在意義や成長性を社員が感じられるようにビジョンを示していくことが課題となります。
東京商工リサーチが10日発表した2022年度の全国倒産件数は前年度比15%増の6880件と3年ぶりに増えました。新型コロナウイルス禍を受けた実質無利子・無担保の所謂「ゼロゼロ融資」の返済が本格化し、再建を断念するケースが増えました。また、物価高や人手不足も追い打ちをかけたようです。企業にとっては正に待ったなしの正念場を迎えることになります。
日銀の植田和男総裁が9日就任しました。初の経済学者出身の日銀総裁で、黒田東彦前総裁体制で10年間続いた緩和路線を継承しつつ、緩和の長期化に伴う副作用への対応に取組みます。市場は4~6月にも緩和修正を予測していますが、米欧発の金融不安が広がりハードルは高まっています。植田日銀総裁の最初の一手のタイミングは新体制の緩和への姿勢を占う試金石となります。
国内企業が満期の短い社債の発行を増やしています。償還期限まで5年以下の起債額は2022年度に7兆円超と過去最大となりました。投資家は日銀による金融緩和策修正で金利が上昇(社債価格は下落)することを警戒しており、長い年限の社債の購入に慎重です。低金利の長期資金を確保しにくくなれば、企業の設備投資やM&A(合併・買収)に影響を及ぼします。従来、企業は低い金利で長めの資金を調達し、設備投資やM&Aに充ててきました。今後金利上昇が見込まれるなか、長期資金の前倒し調達に動くことや、社債から銀行借り入れにシフトする企業が増える可能性もあります。
自動車レース観戦(富士スピードウェイホテル)やクラフトビール(ザ・ヴィラ&バレル・ランジ)など、好きなことを堪能する「趣味活」ができるホテルが相次ぎ登場しています。新型コロナウイルス禍を経て、観光地を巡る以外の目的を旅に求める動きが出てきました。オンラインでは得られない実体験の魅力が見直されています。これまでのように思うように旅行ができなかった分、コロナ収束後に向け、特別な環境で趣味を楽しむことを目的に宿泊する旅のスタイルがさらに広がる可能性があります。宿泊業・観光業などへ経営のヒントになります。
JTBは6日、2023年のゴールデンウイーク(GW)の国内と海外を合わせた旅行者数が延べ2470万人になる見通しを発表しました。新型コロナウイルス禍前の19年のGWと比較すると1%減の水準まで回復します。海外旅行の戻りが鈍いものの、国内旅行者数は過去最多となります。国内の行楽需要の活性化は、レジャー用品や衣料品など関連消費にも波及しそうです。このデータからも少しずつですが日常を取り戻しつつあります。
日本企業が海外生産を縮小する動きが目立ってきました。内閣府の調査によりますと、海外での生産比率を今後5年で縮小する企業の割合は2022年度に1割を超え過去最高となりました。重要部品の調達が途切れないよう国内に生産を移したり、世界経済の減速に備えて生産体制を見直したりしています。一方、国内生産については、人口減少が進むなかで労働力の確保に課題があります。そこで国内拠点は自働化などで高い生産性を実現した仕組みの構築が不可欠です。
返済不要の「給付型奨学金」の支給対象が2024年度から拡大することが決定しました。年収上限の目安を現在の380万円から600万円に引き上げ、多子世帯と理工農系学部の大学生らを支援します。家計の影響で進学を断念する学生を減らすのが狙いです。新たに約20万人が対象になります。一方、収入要件は課税標準額などを元に計算する必要性があり、受験生や保護者が自身で該当するかを判断するのは簡単ではありません。複雑な制度を知らずに進学を断念するなど進路の選択肢を狭める学生を減少させるためには、高校段階での丁寧な広報が必要不可欠になりそうです。
キャッシュレス決済が一段と加速してきました。クレジットカードや電子マネー、QRコードなどの決済額は2022年に111兆円と過去最高を更新しました。消費全体に占める割合(キャッシュレス比率)も初めて3分の1を上回りました。新型コロナウイルスの感染予防で普及が促進し、経済活動の再開後も勢いが衰えていません。また、4月にデジタル給与が解禁されることも追い風になりそうです。さらに、ポイントや割引がキャッシュレス決済の呼び水になっている側面もあります。「どうせ買い物をするならポイントがつくキャッシュレス決済がお得」という考え方消費者に拡大・浸透しており、キャッシュレス化の流れは当面続くとの見方が大半を占めています。
1日に解禁となった給与のデジタル払いの事業に参入するため、スマートフォン決済アプリのPayPay(ペイペイ)が同日、厚生労働省に指定を申請しました。同社を含み少なくとも8社が参入を検討するようです。また、本格始動が予想される今夏以降に向けて、人事院も国家公務員への支払いで導入検討を始めました。
今日から新年度がスタートします。4月1日から生活や産業を支える制度が変わります。学校でのマスク着用を求めないこと、自転車のヘルメット着用努力義務、公的年金3年ぶりの増額などをはじめ多くのことが挙げられています。改めて確認しておきましょう。